ATHLINGUALができるまで

私は大学に入るまで、海外旅行はもとより日常で外国語に触れる機会が一切ない環境で育ちました。そのため、大学入学時点では日本語しか話せませんでした。

大学入学後、漠然と英語を話せるようになりたいと思った私は、勉強方法が全くわからず、とりあえず英単語を覚えたら話せるようになるだろうと考え、ひたすら新しい英単語を覚えようとしました。しかし、冗長で退屈な勉強はすぐに続かなくなり挫折しました。

そこで私はどうしたら英語を話せるようになるのかを考え始めました。まず、多くの言語学習に関する情報から共通項を抽出すればその共通項こそが普遍的な言語学習法になるのではないかと考え、書籍やネットで言語学習に関する情報を手当たり次第集めました。

しかし、結果的に抽出された共通項は「反復」という自明の真理のみでした。真理ではあるものの、それでは何をどう反復すべきかについては全くわからず、実用性に欠けていました。

引き続き情報収集をしていると、言語学習に関する情報は主に2種類あることに気づきました。

一つは、SLA(人間の言語習得について研究する学問分野。第二言語習得。)の研究に基づき、仮説や理論などを紹介する情報です。もう一つは、「私はこうして英語ができるようになりました」というような、個人的な成功体験や経験則に基づき、実際に行った学習方法を紹介する情報でした。

前者のSLA型情報は、世界中での研究に基づいて「学術的に」裏付けされた情報であることや、ヒトの生物学的特性や言語の特性を踏まえていることから、普遍性の高い理論や仮説を提供してくれる一方で、具体的な学習法にまで落とし込まれておらず、「では実際にどうやって学習したらいいのか」という実践の部分が欠けていました。

後者の成功体験型情報は、その著者が事実として言語習得に成功しているため、その情報に一定の真理が含まれている可能性が高く、また学習法が具体的に記述されているため実践しやすい一方で、その情報に必ずしも学習効果が高くないものが含まれていたり、実は筆者が再現性の低い特殊な条件下で学習していたりする事例(身内に外国語話者がいる etc.)が散見されました。

つまり、前者のSLA型情報は実践部分が不十分で、後者の成功体験型情報は理論部分が不十分でした。また、多くの情報が特定の一つの言語のみの学習経験に基づいているという点も、言語的な普遍性に欠けると言えます。

このように、世の中に溢れる言語学習に関する情報の多くが網羅性や普遍性を欠いており、それが多くの言語学習者が悩む状況を招いているのではないかと思いました。そこで私は理論と実践の両面で網羅性と普遍性を備えた、言語学習者にとって本当に役立つ言語学習法を記述しようと思い立ち、ATHLINGUALを立ち上げました。

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私は大学で言語学を学び、学術論文や書籍、ネットなどでSLA型情報と成功体験型情報を集め、そのほかにも人類進化の過程や人体の構造など言語習得に関連する様々な事柄について知識を深めました。そして、それらの情報を統合し、まず人間が言語を習得するプロセスについての仮説を構築し、その仮説を具体的な学習法に落とし込んでまとめました。そしてその仮説が本当に正しいのかを確かめるために、仮説から落とし込んだいくつかの具体的な学習法を用いて複数の言語を一定期間学習し、その学習効果を記録・比較するという自己実験を行いました。情報収集、仮説構築、自己実験を何度も繰り返して得られた知見を、理論と実践の両面でまとめて記述したものが、ATHLINGUALの原型になりました。

自身の経験も踏まえ、日本の言語学習状況を少しでも改善したい、また学習環境に恵まれない方でも自助努力で言語を習得できるようにしたいという思いから、ATHLINGUALを公開することにしました。

ATHLINGUALを通して一人でも多くの言語学習者の方々のお役に立てることを心より強く願っています。


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