中級と上級とは

およそ1000の頻用語彙を習得した学習者の場合、検定試験等で一般に「中級」とされるレベルには十分に達しています。それでは、中級に達した後の学習はどうすべきでしょうか。いわゆる「上級」とはどう違うのでしょうか。

そもそも中級や上級というのは便宜的にレベルを区別するためのラベルに過ぎず、事実上ほとんど何も意味しないのですが、そのラベルが往々にして学習者を惑わせることがあるので、ここでは中級と上級の正しい認識と、基礎語彙習得後の継続学習について説明します。

結論から言えば、基礎語彙を習得した後は、それぞれの学習者が自分の興味や関心に合った特定の分野のコンテンツについて、学習言語で聞いて話して読んで書いていく過程で、出会った未知の語彙や表現をその都度確認して習得していくという形になります。そうすると何が起こるかというと、学習者によって頻繁に触れるコンテンツが異なるため、習得する語彙が異なっていくのです。

例えば、料理関連のコンテンツに頻繁に触れる方は料理関連の語彙を、スポーツ関連のコンテンツに頻繁に触れる方はスポーツ関連の語彙をそれぞれ身につけていくことになります。その際その特定の分野で頻用される語彙は、仮に他の分野では一切用いられないとしても、その学習者にとっては紛れもない頻用語彙となるので、身につける必要があります。

このようにそれぞれの分野の頻用語彙をどんどん習得していったそれぞれの学習者は、その分野のコンテンツに関しては、相対的に他の人よりも聞けて話せて読めて書けるようになります。その状態こそが、ATHLINGUALが考える上級の然るべき姿です。

つまり、すべての学習者に当てはまるような普遍的な上級というものが存在するのではなく、分野やコンテンツの数だけ無数の上級が存在しているのです。したがって基礎語彙習得以降は、学習者それぞれの興味や関心に沿ってそれぞれの分野の語彙を身につけていくことになります。

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一般に言われる中級・上級という概念は非常に曖昧で、中級の延長線上に上級と呼ばれる何かがあるように感じさせますが、その考え方は現実を正しく捉えられていません。学習者は、中級に達したと言われると、じゃあ次は上級を目指して学習しようという気持ちになりがちです。しかし語彙数でも述べたように、中級以降明確な方向性を定めずに満遍なく語彙を学習していくことは、途端にコストパフォーマンスが下がります。

なぜなら、学習者にとって頻用度が低い語彙まで学ぶことになる上、その場合興味も関心も薄いため学習効率が下がるからです。また巷にある上級文法や上級語彙といった上級〇〇といったものは、一般的に頻用度が低い、特定の分野の専門用語や書き言葉表現の割合が増えただけの内容という場合が少なくありません。

そのため、その特定の分野の専門用語や書き言葉表現に習熟したい学習者を除き、やみくもに上級〇〇といったものに手を出すのは効果的ではありませんし、しばしば中級以降の成長の停滞を招く原因となっています。このように、中級・上級といった曖昧なラベルのミスリーディング効果は想像以上に大きいのです。

同様に、ビジネスレベルとか日常会話レベルなるものも、定義が非常に曖昧なまま用いられていることが多く、事実上ほとんど何も意味しないので注意が必要です。

以上のことから、中級と上級をATHLINGUALなりに定義するならば、分野を問わず共通して頻用される語彙をおよそ1000と仮定し、それらを聞けて話せるようになることを中級と呼び、中級以降それぞれの学習者の興味や関心に合わせて特定の分野の語彙を習得していき、その分野で頻用される語彙を聞けて話せるようになることを上級と呼びます。

実際、例えば特定の分野の専門用語については、ネイティヴスピーカーが知らない単語を非ネイティヴスピーカーの学習者が知っているということはよくあります。つまりネイティヴスピーカーであっても、自分にとって必要のない分野の語彙については知らないのです。

基礎語彙習得以降は、是非自分の興味や関心の赴くまま、学習する言語でたくさんの情報に触れて、楽しみながら自分の好きな分野の語彙を少しずつ身につけていってください。知らないうちに、あなたはその分野で「上級」になっていることでしょう!


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