エンジニアが独立するメリットとデメリット

「独立してちゃんとごはん食べれてる?」と家族や親戚や友人に心配された時用のまとめです。

動機

独立してもちゃんとごはん食べれてるということを毎回説明するのが面倒なので、まとめました。

【メリット】

収入が増える(特に若いうち)

厚生労働省が出している学歴別にみた初任給によると、令和元年の大学卒の初任給は 21 万 200 円だそうです。また、主な産業別にみた初任給によると、IT エンジニアが属する情報通信業の大学卒の初任給は全産業平均より少しだけ高い 21 万 8100 円だそうです。

そこから税金(初月以降は所得税・2 年目以降は住民税も)や保険料(厚生年金・健康保険・雇用保険など)を 15~20%程度差し引いた、いわゆる「手取り(=可処分所得)」はざっくり 18~20 万円程度になります。

一方、フリーランスエージェント最大手の一つであるレバテックフリーランスの単価診断テストで診断してみたところ、以下のような結果になりました。

単価スキル経験年数
50 万円JavaScript1~2 年
52 万円PHP1~2 年
55 万円Ruby1~2 年

つまり、1 年間会社員エンジニアとして経験を積んだ後独立する場合、月商(=月の売上)が約 50 万円になるということです。そこから税金(所得税・住民税)や社会保険料(国民健康保険・国民年金)を差し引いた額が可処分所得になります。フリーランス IT エンジニアの年収・手取り・税金まとめ【図解】によると、単価 50 万かつ経費 100 万/年(=約 8 万/月)の場合、税金と社会保険料を合わせた額は月商約 50 万円に対して約 20%になり、可処分所得は約 40 万円になります。

この記事では、可処分所得から経費を引いていない点が誤りでは?と思いましたが、エンジニアの場合、月商を生み出すために絶対的に必要な経費(例えば小売業における原価など)はほとんどなく、経費にならなくても私的に発生していたであろう勉強代・PC 代・一部家賃などが主な経費になることが多いということを考えると、可処分所得から経費を引いていなくても、あながち間違ってはいない、むしろ肌感覚に近いと思います。

つまり、1 年間会社員エンジニアとして経験を積んだ後独立した 独立 1 年目フリーランスエンジニアの可処分所得(約 40 万円)は同じく 1 年間会社員エンジニアとして経験を積んだ新卒 2 年目会社員エンジニアの可処分所得(約 20 万円)の約 2 倍になります。全て事実ベースで計算していることから分かるとおり、これは再現性が高い事実です。一般的に若い人ほどが会社員としての給与が低い傾向があるため、逆に独立時の収入増加幅はより大きくなります。

参考:フリーランス IT エンジニアの年収・手取り・税金まとめ【図解】

収入増加率が高い(特に若いうち)

年功序列型企業の正社員の場合、年間の昇給額は多くても数万円程度かと思います。一方、フリーランスエンジニアの場合、1 年間経験を積むと、月商が 5 万円以上増加することがよくあります。再度単価診断テストで診断してみたところ、以下のような結果になりました。

単価スキル経験年数
58 万円JavaScript2~3 年
61 万円PHP2~3 年
65 万円Ruby1~2 年

1 年経験が長くなると 10 万円程度単価が増加することがわかります。特に若い人ほど、成長が速い傾向があることや元々の経験が少ない分相対的にできることがより多く増えるという理由で、現場経験による成長幅(=市場価値の上昇幅)が大きくなるため、月商の上昇幅もより大きくなる傾向があると思います。例えば JavaScript の経験年数が 6 年から 7 年になっても、それだけで単価が 10 万円上がることはあまりないと思うので、やはり若いうち・経験年数が短いうちに独立する方が収入増加率が高いと言えると思います。

参考:2018 年版】企業の昇給額の平均は 5,934 円!企業規模別の差も解説

法律やお金、人、社会システムについての理解が深まる

独立すると、会社員時代に総務や人事の方が担当していた各種手続きを、一通り自分でできるようになるまたは把握する必要があるため、その過程で、例えば契約に関わる法律、労働形態の種類、税金に関わる法律など、知らないと損するが会社員だったら気にしていなかったであろう知識が身につきます。また、毎月必ず給与が振り込まれる会社員よりもキャッシュフローを意識する機会が増えるため、資金計画や資産管理についての知識も増えます。

私の場合、明示的な知識が増えただけでなく、正社員とは異なる立場で働くことの身体知を得ることによって、人や社会システムをより多面的に理解できるようになりました。その結果、労働の対価はどう決まるのか、市場価値の源泉は何か、役員と社員・役員間・社員間のパワーバランスの源泉は何か、人はなぜその会社で働くのか、といった問いに対して仮説を構築するための材料が格段に増えました。

理不尽が減る

フリーランスエンジニアの場合、当然ながら社外の者として扱われるため、社員だったら新人または後輩だからという理由で降りかかっていたであろう組織ヒエラルキーにおける理不尽な扱いを受けなくて済みます。備品の管理や謎の雑務、就業時間外のイベント準備などを任されることはありません。

社内のフリーライダーの存在がもたらす経済的理不尽からも解放されます。パレートの法則という法則が知られていますが、自分がもし組織に大きく貢献している(ざっくり言えば給与以上の利益をもたらしている)2 割側の人だった場合、色々な意味で他の社員に足を引っ張られている状態だと言えます。自分より生産性が低い社員が自分と同等以上の給与をもらっているのは、理不尽です。

フリーランスエンジニアの場合、生産性が高ければちゃんと時間単位の単価が上がります。準委任契約の場合、通常時間幅というものが設定されており、ざっくり言うと例えば稼働時間が月に 140 時間から 180 時間の間であれば、支払われる単価が一定というものです。つまり、一定のタスクを 40 時間早くこなせばその分時間当たりの単価は上がることになります。合理的です。

もちろん実際は 40 時間早くタスクが終われば追加でタスクを依頼されますが、それは依頼元が想定していた、単価当たりのパフォーマンスを上回っていることを意味するため、それは次回の契約更新時に単価を上げてもらう確固たる理由になります。合理的です。

フリーランスエンジニアの場合、能力を向上させ、その能力を証明できれば、それに応じて収入を含む待遇はすぐに上がります。私の場合、業務を通して成長した結果パフォーマンスが向上したため、契約更新の度にその成長を加味した単価を提示したところ、会社員だったら上がるのに 5 年かかるような額が半年で上がりました。

自由が増える

まず選択の自由が増えます。フリーランスエンジニアの場合、就職するより何倍もカジュアルに職場や労働環境を選択できるようになります。カジュアルというのは、会社員に比べて手続きが煩雑でない(例えば、年金・保険の切替・入退社の手続き・肩書き変更がない)、数ヶ月〜一年毎に選択の機会がある、職場を転々としてもネガティブな影響がない、というように選択に伴うコストが小さいということです。また、選択の自由が増えると自発的に意思決定する機会と必要性が増えるため、自分の中での価値観や判断基準が次第に醸成され、意思決定の精度が上がると思います。

発信の自由も増えます。情報発信、メディア露出が積極的に行えるという点です。会社員の場合、副業禁止規程がある企業はもちろん、そういった規程が無くとも周りの目や圧力が制限をかける状況は容易に想像できます。フリーランスエンジニアの場合、禁止どころか発信により蓄積した資産(=スキルや作品など)がむしろ本業にプラスに働くことの方が多いです。

空間的自由も増えます。フリーランスエンジニアは、業務委託という雇用形態で契約して働くため、依頼主は法律上就業時間を管理する義務がありません。そのため、成果で仕事量を評価する必然性が高いリモートワークと相性が良く、リモートワークによる依頼主のコストも正社員の場合に比べて低いため、リモートワークが許可されやすいです。エンジニアの場合、Git の履歴を見れば仕事量が一目瞭然なので尚更です。リモートワークによって人混みを避けられることや、自宅で配達物を受けとれることは、想像以上にストレス減少に貢献します。

残業が減る=可処分時間が増える

私の場合、フリーランスエンジニアになってから残業が減りました。(ここでの残業の定義は 8 時間 x 1 ヶ月の勤務日数(約 20 日)を超過した労働時間とします。)正社員の時は月 20~30 時間ほどでしたが、フリーランスエンジニアになってからはほぼゼロでした。依頼されるタスクの難易度・量・伴う責任のいずれも正社員の時よりも大きかったにも関わらずです。理由として、単位時間当たりの生産性に対する意識が向上したこと、雑務がなくタスクの責任範囲がより明確になったこと、同僚や上司への忖度が少ないこと、などが考えられます。

錯覚資産が増える

属するコミュニティによりますが、会社員と同等以上に活躍している(意味深)フリーランスは、独立=リスク許容度が高い、組織に属さなくても生計をたてられている=スキルや自己管理能力が高い、という論理で評価されることが少なくないと感じます。おそらく、自分の知らないことは過大評価してしまう人間の習性によって、会社員経験しかない人は独立した人を過大評価する傾向があることが関係しているんじゃないかと思います。

参考:林修先生も注目する「錯覚資産」とは? 著者自らがそのポイントを解説

自己肯定感が高まる

錯覚資産にも関連しますが、私の場合は、会社や組織に依存することなく自らの力で生きているという自己認識によって自己肯定感が高まりました。何事も依存対象は少なければ少ないほど精神衛生上ベターだと思います。

【デメリット】

実務経験のみで判断されがち

フリーランスエージェントを利用する場合、担当のエージェントの方が技術に詳しいとは限らない(というか大体詳しくない。詳しかったらその人絶対エンジニアになってる。)ため、クライアント企業のエンジニアが見れば高く評価されるであろうポートフォリオや実績がなかなか評価されないことがあります。実務経験の長さでのみ評価される傾向があるため、独学でめっちゃ勉強していても実務経験が浅いと、そもそも案件を紹介してもらえなかったり実際の実力に見合わない単価の案件しか紹介してもらえなかったりすることがあります。1年間の実務経験でも、コミットメントによって得られる技術や経験は雲泥の差があるので、実務経験の長さだけで判断するのはナンセンスだと思います。

私の場合、実務経験が乏しいという理由で、1社を除く全てのエージェントに門前払いされました。私は、ポートフォリオと実装力に自信があったので、クライアント企業のエンジニアに見せれば必ず評価されるからとりあえず紹介してほしいと、唯一対応してくれたエージェントに少々強引にお願いしました。その結果、3、4社のクライアント企業から面談のオファーをいただき、面談した全ての企業から正式にオファーをいただきました。オファーをいただいた企業はいずれもいわゆるモダンな(技術・職場環境の)ベンチャー企業で、別に劣悪な条件を飲んだわけではなかったので、「いや、案件(需要)めっちゃあるやん!門前払いは何やってん!」と思いました。

社会的信用が低くなる

とよく言われますが、独立してから融資や賃貸契約をしていないため、まだ実感したことはありません。

契約・単価交渉関連のストレス

エージェントを利用しない場合、契約や単価交渉は自力で行うことになります。依頼元が知り合いの紹介だったとしても人間必ずしも信用できないので、契約時に変な条項を入れられていないか、本当に報酬を支払ってくれるのかなど、不安になることがあります。

単価交渉に至っては、エージェントを利用した場合でも現場で若干気まずい雰囲気になることがあるので、直接やりとりする場合は尚更です。

また、報酬支払いについては、そこそこ大きめの企業でも遅れることが割とあって驚きました。そのため、そういう場合でも焦らないようにキャッシュフローを意識した資金管理をしておく必要があります。

結論

独立してごはんは豪華になりました。