旅の前にやること
そもそも
私が(主に海外を)旅する際にやることと考えることをまとめてみた。
海外でなるべくハプニングなく効率よく見どころを回りたいけど、どこから手をつけていいかわからない人向け。
行きたい街を決める
自分自身と対話して決める。色々調べていると「〇〇は行っても見るものなくて退屈だった」みたいな情報や、逆に「〇〇は超最高!絶対行くべき!」みたいな情報に出会うことがあるが、「退屈なのはあなたが何も見えてないだけでは?」と思うことや「超最高なのはSNSの情報に踊らされてるだけでは?」と感じることが往々にしてある(煽り)。
旅の楽しさや豊かさは、歴史や文化に関する知見や人生経験に大きく依存または比例するので、持ち合わせている知見も人生経験も自分と異なる他人の感想はスルーして、参考にするのはあくまでも事実情報だけにする。
時期を決める
どの街もハイシーズンやオフシーズンなどがあるので、もし融通が効く場合は時期を調整する。
例えばヨーロッパの場合、天気が良くて日が長くて会社員や大学生の夏季休暇の時期に当たる6-8月はハイシーズンで、世界中から観光客が殺到するので、人気観光地では炎天下で長時間行列に並ぶ必要があったり、移動費や宿泊費が高騰したりと、数々のデメリットを被ることになる(ハイシーズンであってベストシーズンとは限らない)。逆に真冬はオフシーズンで、人混みや費用の面ではメリットが多いが、寒すぎたり日が短すぎたり(だからオフシーズンなのだが)というデメリットも多い。ハイシーズン前後の4-5月または9-10月は人混みも暑さも軽減し日も短すぎないので総合的にベストシーズンと言えるかもしれない。
東南アジアの場合は、乾季と雨季がはっきりと分かれているところが多いので、基本的には乾季がベストシーズンと言える。
また日本の冬は寒くて嫌だとか、春は花粉症が辛くて嫌だとかという理由でその時期に海外逃避するのも一案。
という感じで自分が行きたい街の季節や気候を調べて、自分の状況に合わせて渡航する時期を決める。
無事に行って帰ってこれるか確認する
政情不安や感染症や何らかの事件があったりすると、そもそも入国できなかったり入国できても予定通りに帰ってこれなかったりする可能性があるので、渡航前に現地政府や日本政府の情報、Twitter上の情報などを十分確認しておく。
私は2022年にヨーロッパや東南アジアなどに渡航したが、COVID-19の影響で入国できない国があったり直前に検査を受けないと帰国できなかったりした。
往路と復路を確認する
渡航する手段と帰国する手段を確認する。なんとなくあるだろうと思っていたフライトが、隔日または特定の曜日にしか運行していなかったり、そもそも便がなかったりすることがある。陸路の場合も同様で、地図上で見ると高速鉄道で接続してそうなのに実際は8時間以上かかる普通列車やバスしかなかったりすることがある。思い込みは恐ろしいので早い段階で入念に調べておく。
期間を確保する
旅する期間を決めて確保する。どうせ帰国後に行ってよかったと思う確率が100%(私調べ)なので、色々なコストを払ってでも思い切って期間を確保したほうがいい。
予算を概算する
渡航先の物価や宿泊費を調べて旅にかかる移動費、宿泊費、食費、娯楽費などを概算する。バッファも考慮する。
予算を確保する
概算した予算を確保する。現地で支払う際に価格をざっくり日本円換算しても問題ないくらい余裕を持って予算を確保しておきたい。予算に余裕がないと、お金を使うことに逐一億劫になってしまい、旅が楽しくなくなってしまう(それは本末転倒な)ので。
あと渡航中は気分が高揚して使い過ぎてしまうことが多々あるので、帰国後の生活費はちゃんと横に置いておく。
情報をGoogleマップに集約する
次に訪れる街を理解するための作業をする。
まずはガイドブックやネット記事などを見ながら、そこに掲載されているスポットをあまり考えすぎずに片っ端からGoogleマップにプロット(行きたいところリストまたは自作リストに登録)していく。こうすることでその街で有名なスポットを見逃すことをひとまず避けられる。ここではとにかく情報量(どこに何があるのか)だけ得られれば十分なので、内容の正確さは無視して構わない。
続いて、一般向けの情報には載ってないけど自分が興味あるキーワードをマップ上で検索してみて、行きたいスポットがあればプロットする。例えば私の場合はウイスキーの蒸溜所やバーを検索したりする。
一通りプロットが終わったら改めて街のマップを全体的に眺めてみる。するとその街のより正しい土地勘が得られる。例えばパリだったら「エッフェル塔と凱旋門とノートルダム大聖堂ってそれぞれちょっと離れた場所にあるんだ」とか「ヴェルサイユ宮殿ってパリ市内にあると思ってたけど違った」みたいな発見がある。とても不思議なことに、行ったこともなければマップでちゃんと見たこともない土地なのに、なぜか地理的な先入観を持っていたりするので、己の感覚を疑い続けることが大切。位置だけでなく距離も自分の感覚との齟齬があることが多いので、適当に経路検索をしてみて自分の感覚と齟齬がないかを確認して距離感を補正する。マップ上では徒歩ですぐ行けそうに見えるが、実際は徒歩40分以上かかるみたいなことがザラにあるので距離感は侮れない。これらの情報は、移動手段や宿泊施設の選択に影響する。
優先度を決める
ここまでの作業で、ある程度有名なスポットと自分が興味あるスポットがマップ上にプロットされているはず。ある程度有名なスポットは片っ端からプロットしただけなので、このタイミングでプロットしたそれぞれのスポットについての詳細情報を調べ、自分が本当に興味あるスポットだけをリストに残し、興味がないスポットはリストから削除する。そしてそれぞれのスポットの優先度(絶対に見たいのか時間があれば見たいのかなど)を何となく考えておく。
所要時間の調査
プロットしたそれぞれのスポットを楽しむのにかかる所要時間を概算する。改めてガイドブックやネットで調べてもいいが、調べなくても何となく想像がつくスポットが多い気がする。例えば、門や像や記念碑など、体験するというよりも建造物を見ることが目的になるようなスポットの場合は所要時間が短そうなどと想像がつく。短めよりは長めに概算しておいた方が、現地で柔軟に対応しやすい。
移動手段の調査
プロットしたそれぞれのスポットに行くための移動手段を確認し移動時間を概算する。とはいえ出発地点が特に定まっていないので、マップ上でプロットしたスポットのうちから適当に2カ所を選んで経路検索してみる。すると街を移動する際によく使いそうな移動手段と所要時間をざっくり把握することができる。移動手段は都市によって本当にまちまちで、同じ国の中でも全く統一感がなかったりする。あと有名な観光地に行く移動手段が意外と充実してなかったりするので要注意。
滞在日数を決める
ここまでの作業で、大体の移動時間と各スポットでの所要時間が概算できたはずなので、それらの情報をもとに必要な滞在日数を概算する。私のおすすめは、毎日午前9時から午後5時まで割と休みなく移動して全てのスポットを回るとしてかかりそうな日数プラス1日。体力に不安がある場合やもっとゆったりしたい場合はプラス2日でもいいかも。こう聞くとスケジュールがパンパンな印象を抱くかもしれないが、想定よりも短い時間で満足するスポットも意外と出てきたりして前倒しになることも少なくない。もし不安な場合は、旅行代理店の旅行プランを調べてみて滞在日数を比べてみてもいいかも。
フライトを予約する
航空券検索サービスで該当する日程のフライトを検索する。目的地へのフライトが特定の曜日にしか運行しない場合や、一日ずらすだけで価格が大幅に変わる場合などがあるので、フライトの状況によっては日程を調整する。
宿泊施設を予約する
Booking.comなどの宿泊予約サービスでそれぞれの条件にあった宿泊施設をいくつかピックアップし、それぞれの住所を調べてGoogleマップにプロットする(宿泊施設用リストを作るとわかりやすい)。予約サービスの評価よりもGoogleマップの評価の方が正確なことが多いのでついでにそれもチェックする。
次にそれらの宿泊施設とプロットした観光スポットの位置関係や移動手段を確認する。基本的には優先度の高いスポットへのアクセスがいい宿泊施設を選ぶのがよさそう。
これが意外と盲点なのだが、滞在中にスポットを訪れる頻度を考慮するのも大切。マップを見ているとスポットAとスポットBの中間地点に宿泊すると効率良さそうに見えるが、スポットAは滞在中に一度しか訪れなさそうな場所(宮殿とか)なのに対して、スポットBは滞在中に何度も訪れそうな場所(飲食店街とか)という場合があり、そういう場合はスポットBの近くに宿泊した方が現地でのQOLが高くなる。
ちなみに現地にて
いわゆる民泊的な個人が管理する宿泊施設もたくさんあり、そのような宿泊施設を予約すると、チェックイン時間や鍵の受け渡し方法を調整するために、宿泊予約サービス内のメッセージ機能またはWhatsAppなどで管理者とメッセージのやり取りが発生することが多い。気づかずにメッセージをスルーしていると、当日になって宿泊施設に到着しても部屋に入れないなどの事態になるので気をつける必要がある。
あとオンラインで支払い済みなのに現地でも宿泊費を請求されることが稀にある(大抵は確認ミスで悪気はないと思う)ので、そういう時はうやむやにせずにちゃんと確認して主張する。
海外では、予約詳細に記載されているチェックイン時間の前に到着した場合でも、部屋が準備できていれば即チェックインできることが多い(体感では90%以上)ので、チェックイン時間まで下手に時間を潰さずに直行してとりあえずチェックインできるか聞いてみるとよさそう。まだチェックインできないと言われても荷物を預けたりはできるのでそこまで損はないはず。日本の宿泊施設はチェックイン時間に厳格すぎて幻滅することが多い。
観光パスの調査
複数の観光地の入場券がセットになった観光パスについて調査する。
マップ上にプロットしたスポットが観光パスにどれだけ含まれているかを確認し、まずは純粋に経済的にどれだけ得するかをざっくり計算する。どの街でも観光パスを購入した方が必ず得かというとそんなこともなく、観光パスに最も人気のある観光地のいくつかが含まれていなかったり、元々回る予定がなかったスポットを回らないと元を取れなかったりすることもある。
次に純粋に経済的な損得はさておいてメリットデメリットを考えてみる。メリットは、チケットを毎回購入しなくてもよかったり(海外での決済は意外とストレスなのでこの恩恵は侮れない)、場合によっては並ばなくても入れたりすることなど。デメリットは、事前に観光案内所に行って引き換えなければならないなど観光パスを入手するために手間が増えたり、4日券より3日券の方がよかったみたいに後悔したり、元を取ろうとして心の余裕が無くなったりして、購入しなければ無かったはずのストレスが増える可能性があることなど。
これらを考慮すると、チケットを毎回購入しなくてもいいとか観光地に並ばずに入れるとかは、本来遊園地のファストパスのように金額を上乗せしてでも享受するようなメリットなので、とにかく時間と手間の節約が最優先という人は経済的な損得は考えるまでもなく購入するのがよさそう(私は大体こっち)。
経済的な損得にシビアな人は、精神的なデメリットの影響を受けやすい傾向があるので、そのデメリットを経済的に-20%と仮定して、ざっくり計算して20%以上得するぐらいの経済的メリットがある場合にのみ購入するのがよさそう。
交通パスの調査
一定期間公共交通機関に乗り放題になる交通パスについて調査する。
交通パスは非経済的なメリットが明らかに大きいので、経済的な損得をあまり考えすぎずに買った方がいい場合が多い。というのも、どの国のどの都市でも、公共交通機関のチケット購入は本当に煩雑で面倒なことが多く、極力決済回数を減らしたい(最初の1回だけにしたい)ので。
例えば、地下鉄の券売機が壊れていたり、台数が足らずに長い行列ができていたり、券売機によって使える紙幣が違ったり、小銭しか使えなかったり、チャージ式で残高不足になると改札から出られないのにチャージする機械もなく係員もいなかったり、乗り換え時のルールが複雑だったり、バスやトラムの運転手からチケットを購入するためのコミュニケーションが面倒だったりお釣りが出なかったり、とにかく不安要素が多いので滞在中何度か公共交通機関を使うことが分かっている場合は問答無用で購入するのがよさそう。
不確実性を意図的に入れる
ここまではなるべく不確実性を排除するための方法を書いてきたが、その上で不確実性を意図的に入れると旅はもっと豊かになるかもしれない(単なる無計画とは質が違う)。目的地まであえて公共交通機関を利用せずに歩いていき、道中気になったところに寄り道するとか、遠回りでもいいから毎回異なるルートを選んでみるとか、目的地を定めずに面白そうな方向へと散歩してみるとかとか。そんなことをしているとやはり思いもよらぬ出会いに恵まれるものです(占い師か)。
何事もよしなに
ここまであえて順序立てて書いたが、慣れるとそれぞれの作業を同時進行して情報を整理できるようになるので、そこまで厳密にやる必要はない。また事前情報が間違っていたり、自分が事実を誤認していたり、現地でハプニングに遭遇したりすることも確率的にあるので、全てが想定通りにいく前提で綿密すぎる計画を立てていると不測の事態に対して脆弱になりがち。何事もよしなにやるのが吉。
勉強をたくさんしておく
英語や現地の言語、世界史や各国史や美術史などの歴史、民俗や宗教や食や建築や都市計画などについて事前に勉強しておくと旅はもっと豊かになる。海外を旅すると受験勉強が役に立つ場面が多くあって、知識詰め込み型の勉強もあながち馬鹿にできないという気持ちになる。
遺書を書いておく
というのは半ば冗談だが、家族や友人などに定期的に連絡するというルールを事前に共有しておいて、連絡が途絶えた場合には何か重大な異変があったのかもしれないと、ちゃんと気づかれるようにしておくといいかも。一人旅の場合は特に。
徳を積んでおく
普段から徳を積んでおくと、運頼みの状況が好転する確率が上がるかもしれません(だから占い師か)。
その他
荷物については旅の荷物を、通信や決済手段については世界紀行2022反省会を参照。
結論
みんな自分の好きなように旅したらええねん。